ビデオゲームが10代のこころに与える影響
Video Gaming on Teens' Minds
報酬に関係する脳領域の灰白質容積はビデオゲーム使用頻度の高いプレーヤーのほうが低頻度プレーヤーよりも大きい。
ビデオゲームが10代の青少年に広く浸透しているため、ゲームが脳の腹側線条体報酬領域に及ぼす影響を詳しく調べる必要がある。Kühnらはベルリン市内の複数の中学校から登録した健康な14歳の青年154人に2種類のギャンブリング課題を行わせ、課題遂行中の構造的MRI(sMRI)と機能的MRI(fMRI)を撮像した。同時に、賭けまでの潜時、賭けの成否を伝えたとき(正・負のフィードバック時)の脳活性化が測定された。
自己申告に基づきビデオゲームで遊ぶ時間(中央値で1週間に9時間未満、または9時間以上)により学生を2つのグループに分けた結果、高頻度プレーヤーは76例(男子52例)、低頻度プレーヤーは78例(男子20例)であった。
sMRIにて、高頻度プレーヤーの左側腹側線条体灰白質の容積は、低頻度プレーヤーに比べ大きかった。線条体灰白質の容積はギャンブリング課題における潜時と負の相関を示した。fMRIにて、正のフィードバック(賭けに勝つ)に対して負のフィードバック(賭けに負ける)を受けたときの同領域の活性化は、高頻度プレーヤーのほうが低頻度プレーヤーに比べ大きかった。
コメント
これらの結果はゲームプレーヤーを機能的MRIで調べた他の研究の結果と整合している。たとえば、PETを用いた研究ではプレーヤーにおけるドーパミン放出の促進が示されており、ドーパミン作動薬を服用しているパーキンソン病患者では病的ギャンブルの副作用が知られている。しかし、今回の横断的研究では、ビデオゲームの使用が灰白質の容積を増加させるのか、それとも線条体が大きいとゲーム使用頻度が上昇するのか、という因果関係を明らかにすることはできない。賭けに負けたときの脳活性化が大きいことは、病的賭博者の「喪失感を追い求める(chasing loss)」、すなわち使い果たすまで賭ける行為に関連しているのかもしれない。ビデオゲームの使用が児童・青年の発達に与える有益・有害な影響について認知機能の研究により明らかにすることが重要である。また、ビデオゲームの開始年齢とこれらの影響との関連を調べる必要がある。本研究の参加者を追跡調査すれば、ビデオゲームの使用頻度が将来の精神病理学的な依存性、強迫性、その他の問題に関連しているかどうかを検討することができるであろう。
—Barbara Geller, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry December 22, 2011