ある種の自閉症は治療が可能かもしれない
A Possibly Treatable Type of Autism
本研究で見出された遺伝子変異による分枝鎖アミノ酸経路の変化は栄養補充で正常化する可能性がある。
本論文の著者Novarinoらは、自閉症、てんかん(あるいは脳波異常)、そして知的障害を有する患者の血縁関係にある3家族を対象にエクソーム領域の遺伝子型を解析した。
罹患者は分枝鎖ケト酸脱水素酵素遺伝子(BCKDH)に種々の変異を有していた。このBCKDHは分枝鎖アミノ酸(BCAA;ロイシン、イソロイシン、バリン)を異化する蛋白をコードする遺伝子である。同遺伝子のノックアウトマウスでは血漿中および脳内のBCAA値が低く、他の自閉症モデルでみられる神経学的異常(けいれん発作、振戦、後肢把握反射など)を示した。ノックアウトマウスでは血液脳関門(BBB)におけるBCAAトランスポーター(主要神経伝達物質も輸送する)の異常ならびに脳内における他のアミノ酸値の上昇も認められたが、これらの変化が表現型の発現とどのように関連しているのかは不明である。
BCAA強化餌を与えられたBckdh-ノックアウトマウスは神経学的改善を示した。罹患者の血漿中BCAA値は血縁者および一般集団の基準値よりも低かったが、栄養補充後ただちに有意に上昇し、空腹時検査において正常化する傾向が認められた。著者らは表現型の評価を今後実施する予定である。
コメント
臨床医が悩むところは、血漿中のBCAA値を検査するかどうか、低値を示す患者に対して栄養補充療法を実施するかどうかであろう。治療成績のデータが乏しい現状を踏まえると、臨床医はケースバイケースでこれらの判断を下す必要がある。また、血漿中のBCAA値が正常化されたとしても、患者(の年齢)が社会生活・言語技能を発達させるのに重要な時期を過ぎている可能性もある。しかしながら、こうした重要な時期の再開(reopening)に関する最新研究(Nature 2012; 487:24)の成果が、治療しうる変異を有する年長自閉症者のスキル発達にいずれ応用可能になるかもしれない。
—Barbara Geller, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry October 1, 2012