PTSDに対する心的外傷焦点化認知行動療法への情動制御追加
Adding Emotion Regulation to Trauma-Focused CBT for PTSD
情動制御の訓練は脱落率を低下させ、治療成績を改善する。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者の少なくとも1/3以上が心的外傷に焦点化した認知行動療法(CBT)に反応しないことから、研究者らはCBTから有益な効果を得るためには情動的耐性を高める技能(スキル)が必要な患者がいる可能性を示唆している。本論文の著者Bryantらは、CBTの前治療的アプローチとして情動制御訓練と支持療法の2つを比較する無作為化対照試験を実施した。
参加者は自動車事故または性的暴行以外の暴行に起因するPTSDを有する患者70例(年齢範囲 18~65歳;女性54%)であった。両群の治療は12回のセッションから成り、導入セッションから始まり、心的外傷に焦点化したCBTのセッションを7回受けて終了した。2~5回目のセッションでは、各群の参加者は情動制御の技能訓練(苦悩耐性獲得、呼吸再訓練および/または漸進的筋弛緩法)もしくは支持療法のいずれかを受けた。
治療完遂率は技能訓練+CBT群では83%、支持療法+CBT群では62%であった。6ヵ月追跡率はそれぞれ58%と32%であった。6ヵ月追跡時点において、技能訓練+CBT群では支持療法+CBT群に比べ、依然としてPTSDの基準を満たす割合が低く(28% 対 50%)、症状評価尺度のスコアが低く、CBTの曝露療法期間中のセッションとセッションのあいだにおける苦悩レベルが低かった。
コメント
本研究には情動耐性訓練群でも脱落率が高いという限界がある。しかしながら、情動制御の技能訓練は脱落率の低下、曝露療法中の各セッション間の苦悩の減少、そして臨床的転帰の改善と関連していた。心的外傷焦点化CBTを開始する前に、臨床医はPTSD患者に対して情動制御の教育を検討すべきである。
—Deborah Cowley, MD
掲載:NEJM Journal Watch Psychiatry April 1, 2013