ADHDの非薬物治療:メタアナリシス
Treating ADHD Without Drugs: A Meta-Analysis
遊離脂肪酸の補充は、薬物療法の使用に対する補正を行ない評価の盲検化された解析において、ポジティブな効果を示した。
注意欠如・多動性障害(ADHD)と診断された小児におけるADHDの症状に対して薬物療法は大きな有用性を示し、その効果量は0.9と高い。しかしながら、行為障害の既往がなくてもADHD児の婚姻、就労、法的所有権(財産)に関する長期予後は不良である(JW Psychiatry Nov 5 2012)。さらに、非薬物的介入を希望する家族もいる。非薬物治療に関する臨床試験およびメタアナリシスの結果は一様ではなく、その原因の1つは評価者に対して盲検化がなされていない場合があるためである。非薬物的アプローチの有用性を検討することを目的に、本論文の著者Sonuga-Barkeらは、ADHDの診断を有する小児(年齢範囲3~18歳)を対象としたすべての無作為化対照試験のメタアナリシスを企業支援下で実施した。
非薬物的介入と薬物的介入を併用した試験は解析対象から除外された。2,904件の文献がスクリーニングされ、このうち54試験が本研究におけるメタアナリシスの選択基準に合致した。このうち1試験は認知行動療法群とニューロフィードバック群の2群が置かれていたため、合計55件の介入試験が解析対象とされた。
評価の盲検化の有無を問わず試験結果を統合した解析では、遊離脂肪酸の補充(11試験)および人工食品着色料を含まない食事(8試験)は対照アプローチに比べ有意に優れていた。“通常治療”対照群における薬物療法の使用で補正すると、依然として有意な効果を示したのは遊離脂肪酸補充のみで、その効果量(0.17)は小さかった。評価が盲検化された試験の解析では、これら以外に有意な効果を示した介入は1つもなかった(他の試験とは、食物除去:7試験、行動療法:15試験、ニューロフィードバック:8試験、認知行動療法:6試験)。
コメント
遊離脂肪酸補充は読解およびスペリングに対して好ましい効果を示し、学習障害が合併する20~25%のADHD児童に対してとくに有用と思われることから、薬物療法を拒否する家族には試みてもよいであろう。食品着色料除去食は、とくに食物過敏症の既往がある患児に対する選択肢になりうるが、こうした特別食を確実に調達できるかどうか、そして無着色が心理的に負の影響を与える可能性に十分注意したうえで実施すべきである(JW Psychiatry Feb 28 2011)。今後は食事が薬物療法に与える上乗せ効果に関する研究が必要である。
—Barbara Geller, MD
掲載:Journal Watch Psychiatry February 15, 2013