軽症~中等症うつ病に対する短期力動的療法と支持的療法の比較 Brief Dynamic vs. Supportive Therapy for Mild-to-Moderate Depression 短期力動的療法は中等度の症状に対して優れており、6ヵ月の追跡期間を通じて効果が持続した。 短期力動的療法はうつ症状の治療に有効であることが知られている。イタリアのRossoらは今回、軽症~中等症うつ病(うつ状態)を有する外来患者を対象にBDTと支持的療法の効果を比較・検討した。 対象患者88例(男性27例

軽症~中等症うつ病に対する短期力動的療法と支持的療法の比較
Brief Dynamic vs. Supportive Therapy for Mild-to-Moderate Depression
短期力動的療法は中等度の症状に対して優れており、6ヵ月の追跡期間を通じて効果が持続した。
短期力動的療法はうつ症状の治療に有効であることが知られている。イタリアのRossoらは今回、軽症~中等症うつ病(うつ状態)を有する外来患者を対象にBDTと支持的療法の効果を比較・検討した。
対象患者88例(男性27例;年齢範囲 18~65歳)は精神療法(心理療法)を希望したことがあり、向精神薬は非服用中で自殺傾向は認められず、大うつ病、気分変調性障害、特定不能(NOS)のうつ病性障害、または抑うつ気分を伴う適応障害と診断されていた。すべての参加者が特定の重要な問題を抱えているか、最近重大なライフイベントを経験していた。対象患者は無作為に2群に割り付けられ、情動焦点型BDTまたは支持的療法のセッションを15~30回受けた。いずれの療法もマニュアルに基づいて実施された。
両群が受けた療法のセッション回数に有意差はなく、両群とも治療により改善した。うつ症状が軽度の患者群では、2種類の療法とも同様な有効性を示した。しかしながら、中等症の患者群では、治療終了時点のうつ症状および不安、追跡6ヵ月後の症状と機能に関して、BDTのほうが有意に大きな改善をもたらした。中等症群における追跡6ヵ月後のうつ症状寛解率はBDT群の90.5%に対し、支持的療法群では34.8%で有意差が認められた。
コメント
本研究の患者群では異なる診断が混在しており、うつ症状の誘因や寄与因子と思われる“焦点となる問題”またはライフイベントが存在した。(今回、)このような集団内の中等症患者において、DBTのほうが優れていた。(この結果を踏まえ、)中等症うつ病(の治療)において支持的療法よりもBDTを推奨したいと考える臨床医もいるかもしれない。(今後、)BDTと認知行動療法を比較する研究から有用な知見が得られると思われる。