“新企画立ち上げ。それは産みの苦しみと
意見の食い違いが生じる地獄の苦行――と、言うのは
多少脅かしすぎではありますが、
実際に一番大変で時間のかかる工程です。
デビュー作が終了した後、当然ですが新作を書かなければなりません。
しかし、新人賞の時のように書き上げて見せる、というプロセスではなく
企画を出す→編集会議で通る→プロットを担当さんと打ち合わせ→執筆
→改稿→出版準備、といった流れをとります。
チャートを見るとごく当たり前で簡単そうですが、
ここが新人作家が挫折する大きな壁となっています。
具体的に何がきついのか見ていきましょう。
① 企画が通らない
新作を書く時、最初は企画書という形(プロット形式でも可)で
担当さんにプレゼンテーションします。
ここで、勢い余っていきなり本文を書くとボツになって全部無駄になります。
(全没は心が折れる確率が高いので、なるべく避けましょう。マジで……)
担当さんからOKが出ると編集会議に出されるのですが、
企画が通る確率はあまり高くありません。
通常、ベテランの作家でも10本出して1本通るかという通過率です。
タイプの違う企画書を10本出すのはなかなかシンドイです。
運良く1本で通る時もありますし、手際のいい人はすぐに
編集者(部)をノセて
ちゃっちゃと執筆に入りますが、
普通は苦労します。
プロットを素早く多く作る訓練をアマチュアの時にしておくと
こういう時に役立ちます。引き出しの多さもここで問われるでしょう。
自分があまり書きたくない(書けそうにない)プロットが編集部ウケすると
ドツボにはまります。
企画が通ったのに書けないというのは辛いものがあります。
また、企画がいつまでも通らないと執筆が出来ないので
非常にフラストレーションが溜まります。
アマチュアならば、書いて即公開が出来るのですが、プロになると
公開までが長かったり、企画が立ち消えてしまうこともあります。
② 担当さんと意見が合わない
ようやく企画が通って詳細なプロットを担当さんに提出――……。
しかし、ここでまた一つ壁があります。
展開やキャラの詳細を詰めていく段階で、やはり担当さんと意見が
合わないといったことが多々あります。
その場合は逐一修正していくのですが、譲れない部分でぶつかると
非常にこじれます。そして進行が滞ります。
なぜ編集者は時間を守らないのかでも書いた通り、
編集者は発売日の決まっていない作業を後回しにします。
その為、2週間以上、プロットの返事がこないこともしばしば……
ここでまたフラストレーションが溜まります。
「メール一往復に何週間かかるんだ!」と怒りの声が出てしまうことも。
兼業ならさておき、専業だと待ちの時間は持て余すことになります。
② 本文執筆&改稿。そしてようやく本に。
プロットにOKが出たら、ようやく本文を書き始めます
途中、プロットから脱線することもありますが
とにかく最後まで書き続け、初稿が完成したら再び担当さんに送ります。
そして長い長い返事待ち……下手したら返事まで1~2ヶ月はかかります。
返信が早い人は2週間以内にきますが、
編集者のスタイルや作家の重要性にも左右されます。
早い話が売れてない人は後回しです。
厳しいですが、これがプロの世界です。
改稿指示がきたら改稿します。そして担当さんに送り返し、再び待ち。
これを繰り返してたらもう企画から半年くらい経ってたりします。
新作が出るまでは、早い人でも4ヶ月はかかります。
遅い人は企画から1年以上かかります。
1年かけてようやく出しても、つまらなければ一巻打ち切りです。
何度も言いますが、厳しいです。
プロとして生き残るということは、こういったフラストレーションの嵐に
耐えなければならないのです。
新企画立ち上げを作家殺しと揶揄したのは、こういう苦行が
待ち受けているからなんですね。
もっとも、良い作品を生み出せれば、
その後のシリーズ展開が楽になるので
手を抜けない作業でもあるわけです。”
作家殺しの地獄の新企画立ち上げ