“国家のほうからみれば徴税のコツは「なるべく政治的力をもたない集団」から「なるべく気付かれないようにこっそり」税金を徴収することで、露骨でマンガ的な例を挙げると、たとえば税金ではないことになっている税金である日本の会社員から徴収する社会保険・厚生年金料は会社員のほうが給与票を眺めて「ああ、おれは4万円保険料を払っているのだな」と思っているときには、実は会社から給料として支払われる前の段階でもう4万円会社員本人に代わって支払っているので、ほんとうは8万円支払っている。
なんとなく書いていても子供だましもいいところで、こういう詐術をおもいついた人の心根の卑しさというものが胸に迫るていの「知恵」だが、これは案外有効であることが判明して、たしかいまでも日本では会社員が30万円の月給から4万円の保険料を払っていると思っているときには、実際には34万円の給料から8万円の保険料を払っているという仕組みが続いているはずである。”