“世界陸上じゃなくて、リーマンの爆弾製造世界選手権とか無いの? 俺、かなり有望株だぜ。
『さぁ、まず計算ミス!先手を打ってきましたね、チャンピオンは』
「ええ、規模は小さいですが蓄積すれば大きな爆弾になりますよ」
『あっと!言われたことを忘れてます!メモをしていない!!』
「基本ですね。ただ、チャンピオンはこういう基本を疎かにしません」
『取引先に渡す見積書を放置しているようですが』
「はい、明日で良いやという姿勢も大切です。恐らく、最後の引き金にするつもりでしょうか?」
『あっと!!今日が納期だ!しかし、見積書のことは気に留めない!』
「明日でいいやって思うと次の日には忘れてるんですよね。納期が迫るほど爆弾は大きくなります」
『普通なら気付くのでは?』
「それはメモしていないからですね。メモしないことを伏線とするつもりでしょう」
『さぁ!いよいよ佳境!取引先から催促のメールが来た!そのメールでやっと見積書を思い出したのか!?』
「ここが勝負どころでしょう」
『お!焦って見積書にかなり適当な事をかいているようだぁ!』
「いや、本人は恐らく真面目に計算しています。ただ最初の計算ミスがここで生かされています!」
『あー!!ノーチェックだ!上司のハンコをもらわずFAXした!これはすごい!!』
「チャンピオンの勝ちパターンです!上司に見せれば怒られるので、ノーチェックFAXという大技です!!」
『さぁ!ラストスパート!!不審に思った取引先が上司に電話した!』
「伏線は十分!後はどう連鎖するかですね!!」
『上司が見積書を手にとって震えている!そして…来た!チャンピオンの計算表を見直した!』
「いいですよ!最初の計算ミスが見事に利いています!!」
『上司の顔色が赤くなっています!!』
「ん~、ちょっと甘いですね。顔色を赤くでは無く、青くしないと…このままでは優勝は…」
『いや…あ~!!上司が今期の見積書を全て調べ始めた!これは…そして…顔から血の気が引いていく!!』
「素晴らしい!緻密な伏線から連鎖…そして溜めに溜めた全部デタラメの見積書まで…もう勝利は間違いないでしょう!」
”