“ ある日アリゾナ上空で、モルタルの全航空機を飛び交う無線通信を上空からモニタリングしていたら、こんなことがあった。まず最初にセスナのパイロッ トが航空交通管制官(ATC)に対地速度をチェックするよう頼んだ。「90ノットです」とATCが答える。すかさずツイン・ボナンザ(双発レシプロビジネ ス機)が同じリクエストを出す。「対地で120」という答え。するとなんと驚いたことに、海軍F-18戦闘機までもが対地速度チェックしてくれ、と無線に 割り込んできたのだ。 彼の狙いは手に取るように分かった。無論、対地速度計

ある日アリゾナ上空で、モルタルの全航空機を飛び交う無線通信を上空からモニタリングしていたら、こんなことがあった。まず最初にセスナのパイロッ トが航空交通管制官(ATC)に対地速度をチェックするよう頼んだ。「90ノットです」とATCが答える。すかさずツイン・ボナンザ(双発レシプロビジネ ス機)が同じリクエストを出す。「対地で120」という答え。するとなんと驚いたことに、海軍F-18戦闘機までもが対地速度チェックしてくれ、と無線に 割り込んできたのだ。
彼の狙いは手に取るように分かった。無論、対地速度計なんてコックピットに備え付けのがあるので、それを見れば済む話だ。要するに彼は自分より小さ い虫けら潰して喜んでる下々のみなさんに本物の高速がどんなものか見せてやろうとしている…。「Dusty 52、対地は620です」、ATCは答えた。
こうなりゃこっちもやらないわけにはいかない。後ろの席でウォルターがマイクのボタンを押す音が聞こえた。カチッ。ウォルターはなんともシレっとし た声で上空8万1000フィートからの対地速度を確認するよう頼んだ。ギョッとしたのは管制塔だ。どう見たって管制圏外ではないか。管制官は冷静なプロの 声でこう答えた。「Aspen 20、対地1982ノットです」。それっきり無線の声はシンと静まり、結局その周波数の交信は海岸に着くまで1件もなかった。
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