“この東京という街で、僕らはいつの間にか新宿まで~キロメートル、池袋まで~キロメートル、ではなく新宿まで~分、池袋まで~分、と距離を鉄道での移動時間に換算して思考している。ここではつまり、人間の思考回路上の「距離」が意味を失い「時間」に置き換わっているといえる。こうした現象は、なかなか他の街では起こりづらい。東京ほど面積が広い都市は世界でも珍しく、たいていの場合はここまで鉄道依存が強くないし、ある程度鉄道依存が進んでいても、実際の距離と鉄道での移動時間が極度に食い違うことは珍しいからです。そう、東京はおそらく世界有数の「地理」というものの意味が死んだ街だと言えます。”