オフィス内での禁煙を命じているのに、役員室には灰皿が置いてある。今やそんな
企業は減ってきましたが、監視社会をテーマにした今号の特集に取り組んでいて、そ
んな光景が浮かびました。詳しくは記事に書いていますが、今や会社のパソコンを使
ったメールやネット履歴はすべて閲覧されると覚悟した方がいいでしょう。問題は権
力を持つ者だけが閲覧を許され、持たない者が一方的に監視されるという構図です。
監視側の暴走に目を光らせる仕組みが見当たりません。
社内の端末を監視するシステムは本来、情報漏洩対策などの目的で使われてきまし
た。しかし、最近では、社員の勤務態度を精査して必要な人材かどうかを見極めたり
、リストラ対象となっている社員を辞めさせる口実を見つけたりすることにも使われ
ているようです。懲戒権の乱用が制限されている日本では、会社のパソコンの私的利
用が即、リストラにつながるわけではありませんが、社員にとって不利な材料を見つ
けようと思えば、いつでも見つけ出せる環境にあるのです。
もちろん品行方正な社員であれば、気にする必要はない話です。ただ、パソコンの
監視記録はサーバーの容量次第で半永久的に保存でき、5~10年前の履歴も追跡可
能だそうです。それだけ過去にわたって私的利用を一切していないと言い切れる社員
がどれだけいるでしょう。というよりも、会社の幹部自身が、そこまで品行方正でい
られるのかどうか。監視システムの必要性は認めますが、使う側に「隗より始めよ」
という自覚が見られない企業の悪用は気になります。
(日経ビジネス