“ 美術館と博物館という言葉は、英語ではどちらもmuseumになってしまう。 しかしこれを別々の概念に分けた明治時代の日本人は本当に慧眼だと思う。 沢山の美術館と博物館を見て回っているうちに、気づいた。 実は美術館と博物館は、収蔵品にそう差があるわけではない。 たとえば大英博物館にもルーブル美術館にも、ローマ時代の石像があるし、絵画や剣がある。 そして大英博物館はThe British Museumであり、ルーブル美術館はmusee du louvreと、「博」と「美」の違いはない。 けれども、「博

美術館と博物館という言葉は、英語ではどちらもmuseumになってしまう。
しかしこれを別々の概念に分けた明治時代の日本人は本当に慧眼だと思う。
沢山の美術館と博物館を見て回っているうちに、気づいた。
実は美術館と博物館は、収蔵品にそう差があるわけではない。
たとえば大英博物館にもルーブル美術館にも、ローマ時代の石像があるし、絵画や剣がある。
そして大英博物館はThe British Museumであり、ルーブル美術館はmusee du louvreと、「博」と「美」の違いはない。
けれども、「博物館」にあるものと「美術館」にあるもので、決定的に違うことがある。
それは「美」だ。
博物館は珍しいものを広く沢山集めた場所だ。
そして美術館とは、美しいものを集めた場所なのである。
明治時代の日本人は、いつか同胞の子孫が海外に知見を広めにいくとき、美しいものと珍しいものを分けて考えることが出来るように、こうした名前をつけてくれた。これは日本語を使う人々だけが享受することのできる特権である。