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--愛し合った者同士が家庭をつくる。そういう家族モデルへの信頼が弱まったから、腕力で家族を支配するような現象が起きはじめたのでしょうか?
信田:いいえ。妻を殴る夫たちの弁明は、「愛しているから殴る」です。彼らの言い分は、「自分は君のために懸命に働いて疲れている。なぜ家庭にいるときくらいゆっくり寛がせてくれないんだ」「本当に僕を愛してくれるなら、ちゃんと笑顔で出迎えてくれるのが当然だろう」といったものです。
つまり、「僕はこんなに彼女を愛しているのに、なぜ言うことを聞かないんだ」というわけです。彼らの理屈からすれば、妻が間違っているわけです。
--なるほど。夫にとっての愛情とは、妻をコントロールすることなのですね。
信田:DVの加害者は、結婚してだいたい3か月後から暴力を振るい始め、家庭が暴力と支配の場になります。実際に暴力を振るわないまでも、多くの場合、結婚は男性を変えます。妻をめとる。あるいは父親となることで権力が倍増する感覚を身に付けるからです。
--「家庭を持ったことで責任感が出てきた」という評価もされますね。
信田:確かに表から見れば「責任感が出てきた」とように見えます。でも、裏から見るとこの変化は「父権的、マッチョになった」ということです。
これまでの経験で言えば、男性には、「殴る男」と「殴らない男」の二種類しかいません。外見で両者は判断できません。会社では、やさしくて評判がよくても、家庭ではまったく違う態度をとっている。見事に使い分けている例がたくさんあります。
外では社会正義を訴えているような男性が、家では暴力を振るっている。カウンセリングには、そういう“表向きの顔はいい夫”から「僕の妻なんだから、言わなくてもわかるはずなのに、なぜわからない」という理由でことばや身体による暴力を受けた妻たちが多く来ているのです。
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生まれた子供に嫉妬する夫たち