ケアホームに入所するうつ症状を呈する高齢者に対し、中程度の強度の運動プログラムを行ったが、症状の改善は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のMartin Underwood氏らによる集団無作為化試験の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「これら虚弱高齢者の精神的治療については、何か別の戦略が必要である」と指摘している。Lancet誌オンライン版2013年5月1日号掲載の報告より。 施設単位で介入群と対照群に無作為化し、うつ症状の改善について評価  ケアホーム入所者ではうつ病がよくみられ、不

 ケアホームに入所するうつ症状を呈する高齢者に対し、中程度の強度の運動プログラムを行ったが、症状の改善は認められなかったことが、英国・ウォーリック大学のMartin Underwood氏らによる集団無作為化試験の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「これら虚弱高齢者の精神的治療については、何か別の戦略が必要である」と指摘している。Lancet誌オンライン版2013年5月1日号掲載の報告より。
施設単位で介入群と対照群に無作為化し、うつ症状の改善について評価
 ケアホーム入所者ではうつ病がよくみられ、不良な予後と関連していることが知られる。著者らは、運動療法はうつ病に対して有望かつリスクの低い介入と考え、中等度の強度の運動プログラムがうつ症状を改善するとの仮説を立て実証を試みた。
 試験は、ロンドン北東部と、コヴェントリーおよびウォーリックシャーの2地域にあるケアホームで行われ、入所者65歳以上を試験適格とした。ホーム単位で、介入群と対照群への無作為化を行い(2008年12月15日~2010年4月9日の間)、介入群には、ケアホーム職員に対するうつ病への気づきのトレーニングと、45分間の理学療法士による出張エクササイズセッション(週2回)が施設単位で行われ、また日常生活がより活動的になるように日々の生活が見直された。対照群には、うつ病への気づきのトレーニングのみが行われた。
 主要アウトカムは、高齢者うつ病スケール15(GDS-15)によるうつ病症状の程度とし、12ヵ月間にわたってフォローアップが行われた。
運動プログラムの介入によって、むしろうつ症状が悪化?
 無作為化時点でのベースラインデータは、78施設(介入群35、対照群43)891例から成った。出張集団エクササイズは3,191セッション行われ、平均して被験者(うつ症状あり)5人、非被験者(うつ症状のなかった入所者)5人が参加して行われた。
 ベースラインでGDS-15スコアを有した入所者は765例中374例(49%)であり、765例のうち484例(63%)が12ヵ月間のフォローアップを完了した。
 結果、12ヵ月時点のスコアは、介入群のほうが対照群よりも0.13ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.33~0.60)高かった(悪かった)ことが示された。
 また、ベースラインでうつ病が認められた入所者におけるスコアは、6ヵ月時点では介入群のほうが対照群よりも0.22ポイント(同:-0.52~0.95)高かった。
 試験終了時の断面解析の結果、介入群の対照群に対するうつ病の存在に関するオッズ比は0.76(95%CI:0.53~1.09)で、有意差は示されなかった(p=0.1304)。