6億円は妥当か、高いか――。国際オリンピック委員会(IOC)評価委員会による2020年五輪開催候補都市の視察が4日、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)に先がけて東京で始まった。招致活動費を16年大会立候補時の半分に圧縮した東京だが、視察対応についてはバッサリ半減はしていない。少なくとも6億円が費やされる見込みだ。
16年大会に向けた09年4月の評価委視察では、仮想空間を見せる機器など最先端の技術をアピールした東京。歓迎のデモンストレーションも華々しく行った。都スポーツ振興局招致推進部の担当者は今回について「IOCの方から“派手にやりすぎないように”という話もある。招致にお金をかけすぎないようにと言っているようだ」と簡素化の方針を示した。
とはいえ、都が公金から出す評価委視察への対応費は「予算としては6億円」(同)というから安くはない。ほかに民間組織である東京招致委員会も費用を出すが、こちらは企業協賛金や寄付などで得たお金。具体的な金額は明らかにされていないが、都の負担分と合計して6億円以上が、準備段階も含めて今回の視察に用意された。
招致活動全体では、16年大会は招致委も含めて4年間で約150億円をかけた。そのうち評価委対応には約8億5000万円。「お金をかけすぎ」といった批判もあり、今回は総額を約75億円に減らした。都の負担分も37億円と、前回の100億円から圧縮した中で視察対応には6億円だから、その重視ぶりが分かる。
ちなみに、委員の旅費と宿泊費はIOCが負担。東京側はプレゼンテーションの会場となる高級ホテルの会議室の費用や、プレゼンで使われる動画等の製作、さらに事前の準備費用を負担する。これが6億円というわけだ。
「全体で(招致費が)半分になったといっても、中身の配分となると『では全て半分』とはいかない。必要なところにはお金をかけなければいけない」(同)
視察内容は評価リポートにまとめられ、開催都市が決まるIOC総会(9月7日、ブエノスアイレス)で委員が投票する重要な参考材料となる。ここを4年前の半額にとは、いかなかったわけだ。
6日には、9月の総会にも出席する安倍晋三首相(58)主催の公式歓迎夕食会が元赤坂の迎賓館で開かれる。4年前も当時の麻生太郎首相(72)主催で約30人が招かれ、1人につき100万円に相当する計3000万円がかかった。フォアグラとコンソメスープによる前菜に始まり、メーンは松阪牛とマダイ。ワインに日本酒も振る舞った。
迎賓館は内閣府が所管する。同館によると、首相主催の夕食会のため、政府の施設提供で、使用料は発生しない。つまり前回は料理関係だけで3000万円かかったことになる。
全面改築してメーン会場となる国立競技場で、都民に「6億円」への意見を聞いてみた。
招致賛成の男性会社員(44)は「高いけれど、6億円を使って10倍の経済効果があるならいい。招致に失敗したらムダになる。安いか高いかは結果次第」。連れの女性は「それぐらいかかるのでは」。
一方、招致反対のスポーツ指導者の女性(75)は「日本はそれどころじゃない。東北のことが大事。(6億円は)一般庶民としては、賛成できない」と疑問を呈した。
東京招致委員会は五輪開催の経済波及効果を3兆円としている。その成否にかかわる評価委の視察。迎賓館は外国の元首や首相らを歓待する施設で、使用されるのは年に10回程度。IOCは任意団体で、細かな収支も公開していない。いわば一民間団体の、それもトップでもない人たちが国賓扱いされるのだ。こんな待遇が委員たちが帰国する8日まで続けられる。