「中国の“日本占領”はここまで進んでいる!」

“―平野さんは、ご著書の中で、一度、売ってしまうと、外資だろうとなんだろうと、買い戻すのが困難だと指摘しています。
平野 以前、五島列島で山の買収があったと聞き、持ち主を調べたことがあります。取材を進めるうちに、買収した業者は上海中心部から10kmほど離れた郊外の10階建てビルに所在があるとわかった。しかし、そのビルに登記されている法人は全部で5000社もあって、そのほとんどが実体のないペーパーカンパニーばかり。結局、その業者とはいまだに連絡がついていません。本来、土地を所有している彼らは、日本で固定資産税を払わなければいけませんが、持ち主が誰かわからない「幽霊地主」の場合、行政は追えません。ましてや、海外で土地を転売されたらまったくわかりません。
―なぜ追えないんですか?
平野 まず、転売については外為法(外国為替及び外国貿易法。外国資本との対外取引に関する法律)でも、外資による海外での転売については事後報告すらまったく必要がないとされています。それ以前に日本の土地制度は欠陥だらけなんです。土地の登記は義務ではないし、国土利用計画法の届出制度も不備だらけ。誰がその土地の持ち主か、あるいはどういう売買があったかということを知るシステム、トレーサビリティがない。
柴田 今、環太平洋の主要な国のなかで、外資による土地の買収に対して、何の足かせもついていない、まったくフリーなのは、日本だけですからね。
平野 それに、日本では土地をいったん買ってしまえば、本人が売りたくないといえば、たとえそれが公益にそぐわないとしても、買い戻すのはかなり難しい。それほど、日本では土地の所有権は強い。仮に土地所有者がわかっても、手も足も出ないんです。”
作家・柴田哲孝×大学教授・平野秀樹「中国の“日本占領”はここまで進んでいる!」