出版業界でも不況で
求められているのは
極端でクリアーで刺激の強いくっきりとした言説という
感情も顕微鏡で拡大したような
大げさで振幅の大きなものが耳目を引くとのことだ
販売ターゲットがそのような層であるならば
それに沿う方針も合理的なのだろう
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一般に物事を観察して見る場合に、拡大してみるということは有力な手段である
顕微鏡も望遠鏡もそのようなものだ
小説の一部などはあからさまな拡大とデフォルメとも言える
そのことで何かが分かりやすくなるということは確かにあるだろうと思う
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診察の場面ではある種の拡大鏡に相当する技術を使っているものだが
それがどの程度意識的自覚的かは様々だろう
微細な観察というものは不必要である場合もあるが
現在の倍率10倍というくらいを意識して観察していれば問題はないだろうと思う
しかし倍率10倍で話をしているうちに
患者の心理を増幅してしまう可能性はないのだろうかとも思う
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拡大すると言わず
時間をゆっくりにして場面を再生するということも
有効だと思う
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患者が語り直す場合には
当然のこととして、体験者から、語る人に立場の変更があるので、
そこで一段認識がジャンプする
拡大やスローモーション、過去との比較、別解釈の可能性探求、これらが役に立つ場合が多い
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拡大の技法が文章を書く場合にも共通している
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対人関係としては心理の拡大率が違う人間同士が付き合うことはなかなか難しいと思う
拡大率が違う場合に慰めにもなり、気づきにもなると思うのだが
日常生活の感覚の違いはつらいものではないかと思う