少量の薬剤を使用しつつの精神療法の定式化について

我々が日々実践しているのは
少量の薬剤を使いつつの精神療法である

その技法についてはまだ開発が遅れていると思う

フロイトの時代にはなかったものである

薬剤の登場によって精神療法は非常に簡便になりつつある

強迫性障害でもパニックでも、社交不安障害でも、不安が関係していたら
自動思考と不安の悪循環を説明し、不安階層表を作り、曝露反応妨害法を行い、
不安と時間のグラフを書く

うつがあるなら思考と感情の関係を調査し、
メタ認知について説明し、適切な場面で柔軟に認知を適用できるようにする

しかし、こうした方向と、薬物の使用とのミックスは各人の経験によるところが大きい

一つは各人によって見立てが違い、薬剤師用が違うからである

また一つは、治療者のパーソナリティが違うからである

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しかしながら薬剤の一面として、神経細胞の可塑性を変化させる効果があるのであり、
その点から言えば、可塑性が充分に期待できる場面で、
精神療法を施行すべきだろう

一種のホルモン剤などにも神経可塑性の効果は期待できるように思う
男性が婿入りするよりも
女性が嫁入りしたほうが順応性が高いのは
文化的バイアスもあるだろうが
女性ホルモンそのものの効果があるからだろうと思う

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また、イメージとしては、ある薬剤で、ある種の神経回路を固定しておいて、
未固定の神経回路部分に対して精神療法的にアプローチするとも考えられる
目張りする(マスキング)と表現しても良い

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また別の表現をすると、
薬剤によって誘発される退行場面を用意する
退行した場合には過去の断面が露出するので
その時点での体験の訂正がしやすくなる

薬剤のない場合の退行テクニックはなかなか難しいものであったが
現代では退行のために薬剤を精密に用いることが可能である

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医学部では精神薬理学が主流になってしまったし、
心理学部では薬剤を教えないし、むしろ敵視してもいる
しかし
重要なのは、薬剤を適切に使用しつつの精神療法である