最近は双極性障害のことがあれこれ言われていて
中には気分だけがプライマリーに変動するもののように
考える人もいるのかもしれないが
そうでもないという考えも強く存在している
たとえば3.11の大地震の際に
双極性障害の人たちは大いに心も揺さぶられたわけであるが
内面の分析はともかくとして
外面の行動としては躁状態のように見える行動を呈していた人も多かったと思う
危機に際して躁状態で対応するのは理由のあることで
人間としてはそのようにできているのだが
その際には気分が原因なしにプライマリーに変化してマニーになっているのではない
まず現在は異常なほどの危機であるという認知が発生し
それに対応する形でマニーという気分が発生していると思う
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精神の病気の中には
認知が歪んでしまう種類のものもある
認知がプライマリーに歪んで
現在は異常な危機だと認知したら
あとは大地震の時と同じ反応が起こるはずで
一部の人はマニーで対応することになる
この場合は認知が歪んでいるのであって
認知から気分に至る回路に問題はない
だから気分障害とは言うものの、正確には認知の障害である
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もちろん実際には認知のゆがみが生じた場合に
うつの方向に行く事が多いはずであり
マニー方向は少ないだろうと思う
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厳密に、プライマリーに気分が変動した場合を気分障害と分類するとして、
そのような場合はどの程度あるものか、あまり多くはないのではないだろうか
きっかけと見えるエピソードも、すでに気分障害が始まっていたことの結果であると
解釈されることになるのだが
その場合、素直に、やはりきっかけはきっかけで、そのことが契機となって
気分の変動が発生したのだと考えたほうが良い場合もあると思う
そのように考えてくると
認知行動療法で仮定しているのは
純粋な気分障害と言うよりは
認知の柔軟さを失う病理を根底に持つ気分の変動ということになるだろう
そしてそれに相当する症例は多いように思う