最初の抗うつ薬治療に失敗した後のうつ病治療:STAR*D研究における抗うつ薬の切り替えと
強化療法の直接比較
Treating depression after initial treatment failure:Directly comparing switch and
augmenting strategies in STAR*D
J Clin Psychopharmacol 2012;32:114-119
Gaynes BN, Dusetzina SB, El l is AR, Hansen RA, Far ley JF, Mi l ler WC, Sturmer T.
目的:抗うつ薬の強化療法および切り替えは、最初の薬物治療に失敗したうつ病患者に対して次に行われる最も一般的な2つの治療戦略である
が、これらのアプローチの直接比較は行われていない。そこで、大うつ病性障害患者を対象としたSequenced Treatment Alternatives to
Relieve Depression (STAR*D)試験において、抗うつ薬の強化療法による治療アウトカムと抗うつ薬切り替えによる治療アウトカムを比較するこ
とを目的とした。
方法: STAR*D研究において最初の治療で寛解に至らなかった18~75歳の非精神病性うつ病(DSM-IV)患者(n=1,292)に対する後ろ向き解
析を行った。選択バイアスを最小限にするために傾向スコアマッチングを行い、各試験アームにおける試験参加者のうつ症状の寛解、反応、
QOLを比較した。
結果:傾向スコアでマッチさせた強化療法群(n=269)と切り替え群(n=269)は、患者背景の諸項目に関して十分な均衡が確保された。寛解(リ
スク比1.14、95% CI 0.82‐1.58)あるいは反応の確率(リスク比1.14、95% CI 0.82‐1.58)のみならず寛解(log-rank検定、p=0.946)あるいは反応ま
での期間(log-rank検定、p=0.243)も、治療戦略により差はみられなかった。同様に、QOLに関しても差はみられなかった。Post hoc解析によ
り、強化療法は、12週間以上の最初の抗うつ薬治療に対して忍容性のあった患者および部分反応がみられた患者においてアウトカムを改善す
ることが示唆された。
結論:積極的な最初の抗うつ薬治療を受け、それに対して忍容性のある患者においては、次の段階の治療としての抗うつ薬の強化療法と切り替
えとの間に明確な優劣はなかった。本知見は暫定的ではあるものの、12週間以上の最初の抗うつ薬治療を完了した患者や、軽症のうつ症状が
残存する部分反応がみられた患者では、切り替えよりも強化療法のほうが相対的に有用であることを示唆している。