採録
「エイズは専門外の自分には関係ない」と思われる先生もおいでかもしれませんが、必ずしも、そうではありません。
エイズは、1981年に発見され、2012年で31年目になる感染症です。世界的に患者数は減少傾向にあるのですが、日本では増えている。治療法の改善で患者の死亡が減ったのも大きな理由ですが、問題は新規発症が毎年1000人程度いることです。むろん、エイズの治療は専門家に任せていただければよいのですが、「患者の拾い上げ」に関してはすべての先生方のご協力が必要です。ぜひ、治療が可能な段階での発見をお願いします。
若者が肺炎や帯状疱疹で受診するのはよくあることですが、年に3回も4回も繰り返し罹患するのは、ちょっとおかしい。つまり、「よくある病気だが、経過や患者背景に違和感がある」――。こういう場面に遭遇したことはありませんか。実はこういうケースでHIV感染者だったりするのです。ぜひ検査を勧めてください。
梅毒、淋病、性器ヘルペス、ケジラミなど、性感染症の患者をたまに診ることがありませんか。その際に、ぜひHIV感染を疑ってください。HIVは性行為が大きな感染経路です。性感染症を患っている人は、HIV感染のリスクにも曝されたということです。
「B型肝炎もC型肝炎も性感染症であり得る」という点は忘れてはなりません。特にB型肝炎の治療中の方は要注意。B型肝炎の治療薬はHIVの治療薬と作用が似ているので、もしHIV感染があると、意図せずHIV耐性ウイルスを誘導してしまうことがあり得ます。もちろん、「HIV陽性患者を見つけたら、セックスパートナーの検査」もお忘れなく。