受診される患者様の特徴を教えてください。
開業して25年になるため,開業当時から通院されている患者さんには高齢の方がいますが,若い方を積極的に診察しており,患者さんの平均年齢は若いと思います。女性の患者さんでは男性医師に抵抗がある方が多いためか,3対1で女性の割合が多いですね。
若い方のうつ病は現代型うつ病とよばれる新しいタイプのものです。基本となる人格や育ってきた時代背景が異なると,当然ものに対する考え方や反応が異なるため,年代によってうつ病のタイプが異なるのは当然だと思います。若い世代のうつ病は,自分を今の時代により適応させようとして失敗して落ち込むなど,成長過程での悩みが原因となっているケースが多くみられます。
うつ病の薬物治療において,重要と思われる点は何でしょうか。
比較的軽症例の現代型うつ病患者さんには,抗うつ薬は,服用して劇的に効果が表れるというよりもゆっくり効果が表れてその効果が持続する,しかも副作用が少ないということが重要だと思います。うつ病では長期の服用が必要となりますが,従来の抗うつ薬では長期になるほど副作用が表れ,それに対する治療薬が必要となることもあります。高齢者では副作用として認知障害がみられることもあります。従来の抗うつ薬でないと効果がみられない患者さんもいますが,SSRI,SNRIの発売後は,初診の患者さんでの第一選択はSSRI,SNRIとしています。
また,若い患者さんでは自分が納得しないと服用してくれないため,薬剤について十分説明することが重要です。服用開始時も増量時も,きちんと服用しないと効果がみられないため,自己判断で中断しないように伝えています。
先生がお考えになるフルボキサミンの特徴は何でしょうか。
私は,患者さんの訴えやうつ病に併存する症状,例えば強迫症状や不眠,過眠,食欲不振,過食などにより薬剤を選択しています。フルボキサミンは強迫症状が併存していたり,不眠や,過食などの摂食障害を伴っているタイプに選択しています。
また,フルボキサミンは効果が大変穏やかに発現しそれが安定して持続するという特徴があります。このことからフルボキサミンは現代型うつ病に対して第一選択となると思います。さらに,フルボキサミンは重篤な副作用が少ないと思います。投与初期に吐き気や頭痛がみられることがありますが,服用を開始する前に「そういった症状がみられますが数日間で自然に消えることが多いため,3日待ってみてください」とお伝えしておきます。これでクリアできれば,あとは問題となることはほとんどありません。さらにフルボキサミンは離脱症状が表れにくいため,妊娠などにより中断する際も便利だと思います。太りにくいということもあり,若い女性に適していると思います。
フルボキサミンに新たに追加された75mg錠を使用していかがでしょうか。
患者さんたちが学校や勤務先に薬剤を持参することを考えると,1回に服用する錠数はなるべく少ないほうが便利です。75mg錠の発売により錠数を減らすことができ,変更した患者さんからは非常に評判がよいですね。75mg錠がなかったころは,1日150mg投与の場合,1回につき25mg錠と50mg錠を1錠ずつ組み合わせて服用していただいていましたが,組み合わせが煩雑で服用時に落としてしまうこともあったようです。今では服用も簡便になり,コンプライアンスも高まったと思います。
さらに,うつ病治療は長期にわたるため,患者さんにとって経済性は重要です。今までも同じ系統の薬剤であれば,できるだけ薬価の安いものを選択することがありました。75mg錠が発売されて,フルボキサミンはさらに経済的になったと思います。