未解明であった自閉症有病率の増加を説明する Explaining the Unexplained Growth in Autism Prevalence 自閉症有病率は、「診断基準の変更」「外来患者の算入」「性差」により部分的に変化している。 自閉スペクトラム症(ASD)の発生率は増加しているが、その理由は十分に説明されていない。本論文の研究者Hansenらは、デンマークの精神疾患の登録データを用いて、ASDの発生率の増加について検討した。 デンマークでは小児精神医学専門医のみがASDの診断を下せる

未解明であった自閉症有病率の増加を説明する
Explaining the Unexplained Growth in Autism Prevalence
自閉症有病率は、「診断基準の変更」「外来患者の算入」「性差」により部分的に変化している。
自閉スペクトラム症(ASD)の発生率は増加しているが、その理由は十分に説明されていない。本論文の研究者Hansenらは、デンマークの精神疾患の登録データを用いて、ASDの発生率の増加について検討した。
デンマークでは小児精神医学専門医のみがASDの診断を下せるため、この登録データはきわめて信頼性が高いと考えられている。さらに、研究者らはこの登録データから2つの変化の影響を検討することができた。すなわち、1994年の国際疾病分類第9版から第10版への変更、および1995年からの外来患者のデータベース登録への追加算入である。1980~1991年の出生コホートを含む全対象者(677,915例)の追跡調査を2011年12月まで行った(そのうちASDの診断されたのは3,956例であった)。
有病率の変化を評価するために、研究者らは登録データの2つの変化前後の発生率を比較し、また実際の発生率と、それ以前の発生率の推移から予測される発生率とを比較した。全体として、ASD発生率増加の60%が診断基準の変更または外来患者の算入を原因としていたが、サブ解析では、診断基準の変更による影響は男児のほうが大きかった。
コメント
上記のデータは、まだ解明されていなかったASD発生率の増加理由の一部を説明するものである。しかし、発生率増加の40%はいまだ説明がついておらず、妊婦は引き続き環境危険因子(例:殺虫剤、母親の喫煙、フタル酸類)を避けるべきである。
自閉症有病率について、外来患者診断による増加に加え、診断基準の変更による増加が男児のみで認められることから示唆されるように、男児の病状が軽度であることが有病率の増加を説明している可能性がある。この概念は、重症度が軽度である男児の有病率が高いという米国疾病対策予防センター(CDC)の知見(Natl Health Stat Report 2013 Mar 20; 65:1)により裏付けられる。さらに遺伝子型決定研究において、リスク遺伝子多型は、自閉症の症状が軽度でIQが高い男児と、女児または症状が重度でIQが低い男児のあいだで異なっていた(Nature 2014 Nov 13; 515:216)。
—Barbara Geller, MD
引用文献:
Hansen SN et al. Explaining the increase in the prevalence of autism spectrum disorders: The proportion attributable to changes in reporting practices. 
JAMA Pediatr 2014 Nov 3; [e-pub ahead of print].