京都・金閣寺の住職、有馬頼底さん ――高浜原発の再稼働をどう思うか。  「京都は観光に頼るしかない。以前、古都の景観を壊しかねない高層ビルの建設計画が持ち上がった時、私たちは当時の京都市長らと激しく戦った。千年以上守ってきた京の街並みや文化が原発で何か起これば、一瞬で壊れてしまう」  ――福島第一原発事故では、半径30キロを超える地域の一部も避難指示区域となった。  「国は『原発は安全』と言ってきたが、うそだった。福島の事故では、被災者はいまだにふるさとにへ帰れず、田んぼも使えない。いったん事故が

京都・金閣寺の住職、有馬頼底さん
――高浜原発の再稼働をどう思うか。
 「京都は観光に頼るしかない。以前、古都の景観を壊しかねない高層ビルの建設計画が持ち上がった時、私たちは当時の京都市長らと激しく戦った。千年以上守ってきた京の街並みや文化が原発で何か起これば、一瞬で壊れてしまう」
 ――福島第一原発事故では、半径30キロを超える地域の一部も避難指示区域となった。
 「国は『原発は安全』と言ってきたが、うそだった。福島の事故では、被災者はいまだにふるさとにへ帰れず、田んぼも使えない。いったん事故が起きれば、大変なことになる。金閣寺を万一の事故で失うわけにはいかない。『想定外』と言われても、取り返しがつかない。原発自体があってはいけないと思う」
 ――なぜ、「原発がいけないと」
 「手塚治虫さんの漫画『ブッダ』で、若きブッダが戦場に行く場面がある。彼がそこで見たのは、殺りくにつぐ殺りく、貧困、差別、死の地獄絵図で、これに疑問をもって出家をした。これこそ仏教の原点だ。仏教にはたくさんの戒めがあるが、第一は殺生戒。人だけでなく、あらゆる生命を奪ってはいけない。仏教者はその教えを守り、みんなにも守ってもらうようにせねばならない」
 「そもそもの問題は、人間が原子力をつくったこと。人間は自然に、逆らってはいけない。地球を大事にせよっていうけれど、その逆で人間が地球に大事にされている。人も虫も鳥も生命の輝きがある。私たちは彼らを殺してはいけない。彼らも全部、仏様の姿だ。だから、仏様同士が殺し合ってはいけない。原爆でも原発事故でも人間が生み出した原子力がさまざまな生命を奪う結果になっている」
 ――人間の生き方が問われている。
 「国は貧しい所に原発をつくっている。原発のお金で寺がきれいになり、檀信徒も助かっている。しかしそれは経済が潤うだけで、精神は全然潤っていない。経済優先の思想が間違っており、寺院はそういうところにこそ、もっと心を配ってほしいと言っている。日本は唯一の被爆国で、原子力の問題を世界に唯一、訴えられる国だ」
 「戦時中は電気がなくても、ちゃんと生きてこられたのに、今の人間はいかに無駄遣いしているか。これは私たち一人一人の問題でもある。自動車がなければ、どこにも行けないことはない。歩けばいい。物がない時でも、必ず対処する。人間はそういう知恵が出てくると信じている」